電気自動車で考えるSDGs – 2(日本の事例紹介)

2020年12月25日

2020年も残りわずか・・SDGsの達成期限である2030年まで間もなく10年を切ります。今年は世界各地のニュースが新型コロナウィルス一色でしたが、コロナの影響を受けたせいかわかりませんが、SDGsの目標でもある、気候変動・地球温暖化という課題への解決がより一層進んだ気がします。世界各国の政府が「脱炭素社会」または「ガソリン車の新車販売禁止」を宣言したり、各国の自動車メーカーも全てまたは一部の自動車を電動化するという目標を掲げたりし、いよいよ脱炭素社会を実現する動きが本格化してきました。

この記事では、1. 電気自動車の普及がSDGsのどの目標達成につながり、どんな世界が待っているのかを紹介するのと、2. 実際に日本でEV関連・脱炭素の活動に取り組んでいる事例紹介をしたいと思います。

日本ではEV普及は環境問題の解決にならない?いや、問題はそこじゃない。

日本政府は脱炭素社会や脱ガソリン車という目標を掲げたものの、EV先進地域である北欧、欧米や中国と比べて、日本はまだまだ動きが鈍いと言わざるを得ません。日本は未だにエネルギー源の75%を火力発電(石炭・石油・天然ガス)に頼っているということもあり、EVの普及は環境課題への解決にならないのではないかと、そもそもEVに対して半信半疑の人もいれば、日本におけるEV充電インフラが未熟ということで脱ガソリン車の目標は達成できないと予想する人もいるでしょう。

確かに、発電源がクリーンでなければ、EVは100%クリーンではありません。更に、EVを製造する段階ではガソリン車より二酸化炭素を排出しているのも確かです。しかし、EV Smartブログによると、製造過程において燃料の採掘(発電に必要な資源の採掘)から、送電、そして走行中に排出される二酸化炭素まで、いわゆるライフサイクルアセスメント(またはWell to Wheel)で見てみると、電気自動車のCO2排出量はトータルで見てもガソリン車より少ない、ということがわかります。

しかし、ここで強調したいのは、今の日本だと火力発電がメインなのでEV普及は環境問題にはすぐ繋がらないことは間違いないですが、大事なのは、「今の日本」を見るのではなく、「これからの日本」や「これからの世界」を見据えることです。

なぜなら、エネルギー業界は常に進化を遂げており、再生可能エネルギ・自然エネルギー・クリーンエネルギーは非常に速いスピードで普及しています。そして、クリーンエネルギーが普及すれば、電気自動車の排出量は間違いなく削減されることになります。

逆にいうと、前向きにならなければ、将来を見据えることができなければ、未来を予測して予め準備しておかなければ、世界に取り残されるしかありません。

クリーンエネルギーが普及するという前提で、EVが普及すれば、この先はどれだけ明るい世界が待っているのか、楽しみに想像しながら、共に取り組んでいきましょう。

日本の事例紹介

クリーンエネルギーと電気自動車が共に普及すれば、以下の4つのSDGs目標に達成することになります。実際にこの4つのSDGs目標に係る活動に取り組んでいる方、団体や会社に以前取材したので、こちらでご紹介したいと思います。

「今の現状」や「過去の固定観念」に捉われず、こちらのパイオニアたちの先進事例を参考にしてみましょう。

目標7:エネルギーをクリーンに、そしてみんなに

7.1:2030年までに、安価かつ信頼できる現代的エネルギーサービスへの普遍的アクセスを確保する。

7.2:2030年までに、世界のエネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの割合を大幅に拡大させる。

北欧を中心に、ヨーロッパでは脱火力発電が急ピッチで進んでおり、完全100%クリーンエネルギーを達成した国、またはもうすぐ達成する国は少なくありません。日本におけるクリーンエネルギーの割合はまだ20%程度ですが、今やクリーンエネルギーに特化した電力会社がたくさん出てきました。

私たちが取材のは、自然電力さんでしたが、この記事では、日本が100%クリーンエネルギーを達成するにあたって直面する3つの課題について言及されました。

自然電力の記事はこちら。

目標9:産業と技術革新の基盤をつくろう

9.1 質が高く信頼できる持続可能かつレジリエントな地域・越境インフラを開発し、全ての人々の安価なアクセスに重点を置いた経済発展と人間の福祉を支援する。

9.4 2030年までに、資源利用効率の向上とクリーン技術及び環境に配慮した技術・産業プロセスの導入拡大を通じたインフラ改良や産業改善により、持続可能性を向上させる。

二酸化炭素の排出源はエネルギー転換、産業部門、輸送部門、家庭部門が挙げられます。その中でも大きく占めているのは産業部門です。工場や会社が率先してクリーンエネルギーに切り替わりうことができれば、二酸化炭素排出量を大幅に削減することができるでしょう。今後の世界的な傾向を見てみると、逆にクリーンエネルギーに転換しないと、投資の対象から外れることになるのでしょう。いわゆるESG投資は、これから企業の方向性を大きく左右することになりそうです。

そこで、私たちが横浜市にある大川印刷を取材しました。日本国内では印刷会社として唯一のCO2ゼロ印刷を実現している大川印刷はSDGsに関連する様々な活動に取り組んでいます。大川印刷のような会社が増えれば、クリーンエネルギーや電気自動車の普及が進み、SDGsの目標達成が早くなるのではないでしょうか。

大川印刷に関する記事はこちら。

また、同じく神奈川県の逗子にあるリビエラ逗子マリーナという、日本初のV2B(電気自動車の電気を建物につなぐシステム)を導入したホテルも取材し、多岐にわたる取り組みを勉強させていただきました。

リビエラ逗子マリーナの記事はこちら。

目標11:住み続けられるまちづくり 

11.2 2030年までに、脆弱な立場にある人々、女性、子ども、障害者、および高齢者のニーズに特に配慮し、公共交通機関の拡大などを通じた交通の安全性改善により、すべての人々に、安全かつ安価で容易に利用できる、持続可能な輸送システムへのアクセスを提供する。

11.3 2030年までに、包摂的かつ持続可能な都市化を促進し、すべての国々の参加型、包摂的かつ持続可能な人間居住計画・管理の能力を強化する。

結局、私たちがここまでクリーンエネルギーや電気自動車を推進しようとしているのは、自分たちの生活をより快適にしたり、今の社会課題を解決したりするため、または子供たちの将来のためでしょう。

SDGs目標11の「住み続けられるまちづくり 」はまさに、私たちの生活そのものをより良くする目標が掲げられています。

電気自動車が普及することによって、その基盤を踏まえて更なる技術革新が期待されます。その1つは「自動運転」です。

近年続いている東京一極集中や少子高齢化により、日本の地域は過疎化が進んでいます。そのため、交通インフラもこれから急速に廃れていくことが予想されます。町中のバスを運転する人が少なくなり、町中の移動は困難になるでしょう。特にお年寄りは、日常的な買い物をするための交通インフラがなければ、生活そのものが脅かされるでしょう。

自動運転といえば、ちょっと危ないのではないかと危惧する人が多いかと思いますが、実はすでに実用化に向けて確実に動いています。2020年11月、茨城県境町では、国内で初めての自動運転バスが定常運行を始めたとのことです。

茨城県境町の自動運転バスに関する記事はこちら。

また、住み続けられるまちづくりというのは、今後自分たちでエネルギーを作って、自分たちで消費する、いわゆる地産地消(または自産自消)が主流になっていくのでしょう。

私たちは実際に、千葉県でエネルギー自産自消の生活を送り、活動に取り組んでいる方も取材しました。エネルギー自産自消は夢物語ではなく、もうすぐそこにある現実です。

木更津市にお住まいの花田さんは自産自消のエネルギーの楽しさを地元の方々に教える活動をしているほか、実際に地元で行われるフェスにもご自身の電気自動車で電力を供給しています。更に、木更津市や日産自動車とも災害時に無償で電力を供給する協定を結んだということです。

花田さんの活動に関する取材記事はこちら。

睦沢町にお住まいの辻榮さんは家も、その隣の工房も、どちらもほぼ100%再生可能エネルギーで発電しています。家の屋上にはソーラーパネルが並べられ、晴れた日には太陽光で家と工房の電気を賄っています。そして曇りや雨の日、または夜間では、ご自身が所有している電気自動車を放電機に繋ぎ、V2Hで電気自動車から電気を供給しているということです。

辻榮さんに関する取材記事はこちら。

目標13:気候変動に具体的な対策を

13.1 すべての国々において、気候変動に起因する危険や自然災害に対するレジリエンスおよび適応力を強化する。

13.3 気候変動の緩和、適応、影響軽減、および早期警告に関する教育、啓発、人的能力および制度機能を改善する。

クリーンエネルギーやEVを活かした活動を進めていくうちに、最終的には目標13の気候変動への対策というところに至るでしょう。産業の技術革新を行い、クリーンエネルギーやEVの普及を促進し、EVを活かしたまちづくりを実現し、最終的な目標としては、やはり今私たち人類が直面している気候変動という大きな課題を解決するためです。

自然電力のような新しい取り組みも、花田さんや辻榮さんのような個人の取り組みも、大川印刷のような会社も、そしてリビエラ逗子マリーナのようなリゾートも、日本において先進事例と言えるでしょう。個人でも法人でも、SDGsに取り組む形は様々。

大事なのは、一人一人が考えてアクションを起こすことです。

2020年は残りあとわずか・・そして2030年まであと10年を切りました。

一緒に前向きに頑張って取り組んでいきましょう!

(そもそもSDGsとは?)


執筆:デニス・チア(ユアスタンド株式会社)

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