電気自動車で考えるSDGs – 1(SDGsとは?)

2020年10月22日

昨日、日本政府が温室効果ガスの排出量を2050年に実質ゼロにする目標を掲げる方針への調整を発表されました。これから本格的に持続可能な開発目標(SDGs)に向けて国が動いていくのでしょう。

今一度、SDGsとは何か、そしてSDGsと電気自動車(EV)との関連を考えてみましょう。

2015年9月の国連サミットで193カ国が全会一致で採択された持続可能な開発目標(SDGs)では、私たちが現在直面している様々な環境問題や社会問題を2030年までに解決するため、または私たちが生きるこの世界を次世代に引き渡すために、17の目標と169のターゲットが設定されました。

このSDGsという世界初の、全世界共通の目標に向けて、国家レベルから市行政までの政策、民間企業のビジネスの方向、戦略転換や経営改革、または個人の生活習慣の変化など、様々な形で動いています。

第2弾:電気自動車で考えるSDGs-2(日本の事例紹介)の記事はこちら!

EVとSDGs

今回、私が注目したいのは、私たちの事業で取り組んでいる「電気自動車」(EV)という分野において、SDGsにはどのような課題を解決し、またはどのような課題をもたらす可能性があるのか、SDGsの関連項目を見ながら考えていきたいと思います。

電気自動車(EV)といえば、走行中に二酸化炭素を排出しないので、環境に良いというイメージが強いのですが、EVがもっと普及すれば、環境問題が少しずつ解消されるだけではなく、実はSDGsのほかの目標達成にも貢献しているのです。一方、走行中に温室効果ガスを排出する代わりに、電気自動車を走らせるために必要な電池をつくるためにどれくらいエネルギーが必要、その過程では二酸化炭素をどれくらい排出しているのか、またはどのような課題があるのか、などの疑問があります。

この連載ブログでは、電気自動車という分野で見るSDGsについて考察していきたいと考えています。電気自動車の普及によってどのようなSDGs目標を達成できるか、またはどのような課題が残るのか、俯瞰的且つ学際的に分析していきます。

連載の第1回では、意外と知られていないSDGsの前身であるミレニアム開発目標(MDGs)のこと、なぜそれがSDGsに変わったのか、そして私たちはSDGsを通してどこに向かっているのかについて考えたいと思います。

SDGsについてご紹介する外務省のページはこちら。

今年75年周年を迎える国連は、第二次世界大戦が終了した後の1945年に世界平和のために創設されたのですが、国際平和や安全保障のためだけでなく、経済、社会と文化の発展のため国際協力を促すために様々な組織で動いています。しかし、創設以来の活動はバラバラで一体感はなかったため、21世紀を迎えた2000年に全世界が目指す共通目標であるミレニアム開発目標が設定されました。

ミレニアム開発目標(MDGs)では以下の8つの目標が設定されました。

目標1:極度の貧困と飢餓の撲滅

目標2:普遍的初等教育の達成

目標3:ジェンダーの平等の推進と女性の地位向上

目標4:乳幼児死亡率の削減

目標5:妊産婦の健康の改善

目標6:HIV/エイズ、マラリア及びその他の疾病の蔓延防止

目標7:環境の持続可能性の確保

目標8:開発のためのグローバル・パートナーシップの推進

ミレニアム開発目標は2015年までのゴールでしたが、貧困・飢餓・乳幼児死亡率・疾病の蔓延防止に関する目標は無事達成し、評価されたものの、課題もたくさん残りました。2015年にミレニアム開発目標が終わったタイミングで、MDGsで残された課題と教訓を踏まえ、新たなゴールである持続可能な開発目標(SDGs)が設定されました。

SDGsとMDGsとは多くの違いがありますが、根本的には以下の3つの根本的な違いがあります。

  1. MDGsは国連本部で議論され、設定された目標であったのに対して、SDGsは世界中の国にある多くの市民団体、ワーキンググループ、多岐にわたる専門家、そして一般市民による長い間にわたる議論を通して創られたゴールです。
  2. MDGsでは、発展途上国を課題を解決するため、先進国がどのように支援ができるかという一方的に支援を与えるような仕組みがベースになっているのですが、SDGsでは発展途上国も先進国も重大な責任があり、全員が行動しなければならないというマインドセットで作られています。
  3. MDGsは目標達成は国家政府の責任であるという前提があるのですが、SDGsは国家政府だけでなく、それぞれの行政、民間企業、そして個人にも責任があるというメッセージが強いです。つまり、世界の課題は政府の問題ではなく、一人一人がその課題を自分ごと化することが大切ということです。

以上の3点を理解した上で、SDGsをもう一度見てみると、SDGsは発展途上国の貧困・飢餓・健康・公衆衛生問題だけではなく、先進国で行われている大量生産や大量消費、その生産需要に応えるために行われる自然破壊が問題視されています。または、大量消費により起きたプラスチックゴミの増加で海洋汚染が注目されたり、エネルギーの大量消費のための石炭石油の発掘による大気汚染、都会化が進むにつれ都会のスラム化、ガソリン車の増加による排気ガス排出、都会と地方の格差の拡大などの問題も挙げられています。そして、自然の破壊がもたらす気候変動による異常気象や自然災害の多発、生物多様性の喪失、海水上昇による被害などによって、先進国や途上国を問わず、私たち人類の命、生活、住む環境そのものが脅かされています。

SDGsはもはや、どこの国のためというよりも、私たちが人類として生き延びるために達成しなければならないゴールなのではないでしょうか。そして、このグローバルな課題をローカルに、今ここでできることをやらなければならないと思います。

さて、最後にSDGsの17の目標を改めて以下表記し、次のブログから電気自動車(EV)という分野からSDGsについて考えていきましょう。

目標1:貧困をなくそう

目標2:飢餓をゼロに

目標3:すべての人に健康と福祉を

目標4:質の高い教育をみんなに

目標5:ジェンダー平等を実現しよう

目標6:安全な水とトイレを世界中に

目標7:エネルギーをみんなに、そしてクリーンに

目標8:働きがいも経済成長も

目標9:産業と技術革新の基盤をつくろう

目標10:人や国の不平等をなくそう

目標11:住み続けられるまちづくりを

目標12:つくる責任つかう責任

目標13:気候変動に具体的な対策を

目標14:海の豊かさを守ろう

目標15:陸の豊かさを守ろう

目標16:平和と公正をすべての人に

目標17:パートナーシップで目標を達成しよう


執筆:デニス・チア(ユアスタンド株式会社)

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