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ヨーロッパにおけるEV公共用充電の現状と今後

私たち人類の存在を脅かすほど深刻な気候変動や環境危機に直面している現在、世界中の国々はこの課題への様々な解決策を講じています。27の加盟国からなるヨーロッパ連合(EU)は、大規模な変化、いわゆるゲームチェンジャーをもたらそうとしています。2019年12月12日にEU理事会で採択された「欧州グリーンディール」では、2050年までにEU域内の温室効果ガス排出を実質ゼロにするという目標を掲げています。日本でも同じような動きを見せています。例えば、横浜市はゼロカーボン横浜という大胆な施策を打ち出しており、同じく2050年までに温室効果ガスを実質ゼロにすることを目標としています。

EUをカーボンニュートラル、またはクライメート・ニュートラルにする、つまりEU諸国において温室効果ガスの排出量と吸収量を相殺し実質ゼロにするためには、エネルギー、商業、工業、農業など全てのセクターに横断的に取り組まなければなりません。そんな中、特に注目されているのは運輸分野です。今まで当たり前とされてきたガソリン車(内燃機関)に取って代わる電気自動車(EV)の普及により、運輸分野は抜本的に変わる曲面を迎えています。また、EVとは別に圧縮天然ガス(CNG)、液化天然ガス(LNG)や水素を燃料とするオルタナティブな種類も増加しています。

本記事は、欧州交通環境連盟(T&E)の2020年最終レポート自動車と二酸化炭素レポート(2020年10月)を参考に、そしてこの2つのレポートを率いたT&Eに在籍しているEモビリティ専門のアナリスト、ルシエン・マシュー氏とのオンラインインタビューに基づいて作成させていただきました。

上記の欧州グリーンディールに基づいてヨーロッパにおいてよりクリーンな移動を実現し、温室効果ガスの排出目標に達成するために、EV販売台数の目標がEUにより掲げられています。具体的に、EVの販売台数は2020年までに5%、2021年までに10%、2025年までに20%、2030年までに30%。しかし、実際のEV販売台数は期待を越え、この目標数値を遥かに上回りました。2019年から2020年前半の市場を占めるEV販売台数の割合は2.4%から8%、およそ3倍に上りましたまた、T&Eによると、自動車市場を占めるEVの割合は、ノルウェーと同様に、2025年に50%、そして2030年に70%まで上ると予測されています。

拡大が止まらないEV市場に応じて、EU加盟国は今度EV充電インフラの整備を急ピッチで進めなければならない状況になりました。

公共用充電インフラの需要が上昇と予想

T&Eによると、現在EVの充電の61%は、一番便利かつ安価にできる自宅で夜中に行われています。またEU加盟国の道路を走っているEVの50%は法人所有、または社員のために会社が購入しているものなのです。そのため、これらの車は社員の自宅、または会社で充電されることが多いです。EV充電は自宅以外に、職場は15%、そして公共用充電スタンドは24%占めています。

しかし、今後予想されているEV市場の指数関数的な成長により、EVの所有は今までの中流の上層階級だけではなく、大衆消費者まで浸透するでしょう。EVの価格が下がり、電池の技術革新によりEVの走行距離や充電時間も大幅に改善されると予想されています。そうなった時、以前環境に優しいEVの購入を検討していたが、高価格という理由で断念した人は、EV価格の低落により、ガソリン車とほぼ変わらない値段で購入することができるようになるでしょう。この新しい大衆層の大多数は大都会に住んでいるのだと指摘されています。

そのため、今後増加が予想される新しいEVオーナーは大都会の集合住宅に住む人が多いでしょう。そして、大都会の集合住宅で直面されるのであろう問題とは、駐車場の個人区画であり、または個人区画でのEV充電設備であります。つまり、集合住宅のEV充電器の殆どは恐らく共用部での設置になるでソフ。

個人区画でのEV充電器設置の難しいところはいくつかあります。

共用部電源の出力不足といった技術的な問題がそのひとつです。管理会社や組合にお願いして出力を上げることも可能ですが、そうすると電気代が上がります。もうひとつは社会的な問題です。集合住宅では、多くの住民が同じビルに住んでいます。たまには、管理会社や地域団体との関係性を持っているところもあります。そのため、共用部にある充電器は誰のもの、誰が使用していいか、誰がお支払いするか、またはどこに設置するかなど、様々な問題が生じます。よくあるシナリオとして、EVを所有していない住民が共用部にEV充電器を設置することに対して反対するという。

集合住宅におけるEV充電器の設置が難しくなった場合、公共用充電の需要が生まれます。実際、公共用EV充電の割合は2020年に24%、2025年に28%、そして2030年32%と増えることが予想されています。つまり、新しくEVを購入する大衆層は自分が住む集合住宅での充電ができなく、公共の駐車場、または民間企業によって運営される駐車場などでEV充電せざるを得なくなるでしょう。

より良い電池、より長い走行距離、より短い充電時間

公共用充電は、行政の補助により無料にされているものを除いて、一般的に非公共用充電より高いことが多いです。例えば、ドイツの公共用充電は1kWあたり0.29ユーロとなっています。一方、自宅での充電はより安くなります。

しかし、T&Eによると、技術革新により急速充電はより安く、より便利、そして高速道路のSA、路上やショッピンセンターなど、より多くの場所でできるようになるとのことです。

さらに、EV電池の性能もよくなることでEVの走行距離が伸びるので、充電する頻度も下がることでしょう。そのため、今のように夜中にEV充電をしなくても、現在のガソリンスタンドによる週間のように、日中に必要な時に急速充電をする習慣に変わっていくのではないでしょうか。

EVの長い走行距離、急速充電の改善により、EV所有者は空いている時間にタクシーとして運用したり、ウーバー(Uber)のようなカーシェアリング、またはアマゾンのようなデリバリーサービスに活用したりすることも考えられます。

EV充電インフラの未来像:急速と普通充電の混合

急速充電の需要が高まる中、普通充電は完全に淘汰されるわけではありません。急速充電は便利ではあるものの、殆どのEV充電は今まで通り、夜中を通して普通充電により行われると予想されています。しかし、集合住宅に住む住民は個人区画におけるEV充電が難しくなるため、公共用普通充電器が必要になってくるかもしれません。今後は、利便性の高い急速充電と実用性のある普通充電が混合に利用されるようになるでしょう。

EV充電インフラはEV市場の拡大によって変化するものだと考えられます。ヨーロッパにおけるEV市場の拡大速度や規模はまだ未知数なものですが、全てのEV所有者にとって便利な充電インフラを提供できるように臨機応変に対応しなければなりません。

2020年現在、日本におけるEVの割合はまだ1%程度ですが、日本政府の目標から鑑みてEV市場の成長はこれから著しくなることでしょう。


執筆:デニス・チア(ユアスタンド株式会社)

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