ヨーロッパのEV事情(2/3)

2024年06月28日

前回の記事ではロンドンのEV事情、ロンドン市内の住宅事情、そして電柱や街路灯を活かして画期的なEV充電インフラをご紹介させていただいた。

今回はイギリスの経路充電と目的地充電について書かせていただく。

経路充電と目的地充電を体験するのに、実際にEVのレンタカーをお借りして回るのが一番ということで、ロンドンでEVレンタカーをすることにした。

UFO DriveというEVレンタカーサービスを使ってみた。面白いことに、こちらのサービスは全てオンラインとアプリで完結することができて、レンタカーの予約から、ピックアップ、そして返却まで、誰とも一切会わずに済んだ。保険の関係で、メールのやり取りを何度か交わしたくらいだった。

予約の際に必要な国際運転免許証や日本の運転免許証の写真、保険へのお申し込みも全てアプリでできたし、車をピックアップする際もアプリで自分の顔写真を撮って認証が取れて、車の施錠・解除も同じアプリでできた。なんだか画期的なサービスだなと思った。(車のピックアップ場所がわかりづらくてかなり苦労したが)

ということで、UFO DriveでもともとフォルクスワーゲンID4を借りる予定だったが、2日前になって先方から車両変更の通知が届いた。なんと前のお客様がID4をぶつけてしまった関係で、私が予約したID4がテスラモデルYに変わったとのことだった。

まず、レンタカーをピックアップした場所は公園や商業施設が集まっている中心部の地下だったが、そこにはBP Pulseの急速充電器とBlinkの普通充電器がずらりと並んでいた。BP Pulseは数台のEVが充電していたが、全体的に稼働率が低い印象を受けた。

いざ、出発!

今回はイギリスの南東部に位置するサリー州(Surrey County)に1時間半程度かけてドライブし、その帰りにサービスエリアに寄ってみた。

サービスエリアにはEV充電場所が2箇所あった。1箇所目はGrid ServeというCPOの急速充電器が6台(12口)並んでいて、もう1箇所はIONITYの急速充電器が18台設置されていた。

日本のサービスエリアでは、最近やっと急速充電器4台が並んでいるところが増えてきたが、ここのサービスエリアでは、自分が想像以上に急速充電器が導入されていた。さらに驚くべきことは充電器の出力と稼働率だった。

日本の急速充電器の出力は90kWが多いが、IONITYの急速充電器は350kWという超高出力でびっくりした。もちろん、車両側ではまだ350kW出力を受け入れるものはないが、将来を見据えて超急速充電器が設置されていた。

そして、IONITYの18台の充電器のうち、13台が稼働していたことにも衝撃を受けた。私が訪れたのが土曜日の午後だったということもあり、充電器がかなり稼働していたし、入れ替わりも激しかった。そして案の定、多種多様なEVが充電していて、見ていても楽しかった。

Grid Serveの方もかなり稼働していて、6口のうち、3口が稼働していた。Grid Serveの特徴として、100%再エネで電力を供給しているところが特徴。

この2つのサービスに共通しているのは、お支払いはGoogle PayやApple Payの他、クレジットカードのタッチ決済、充電カードなどで使用可能。そして、充電料金は会員と非会員で異なっていて、非会員の場合はなんと0.74ポンド/kWh。

会員の場合は以下の2種類がある。

Passport Motion会員:初月3.88ポンド、2ヶ月目以降は月額5.49ポンド、従量課金:0.53ポンド/kWh

Passport Power会員:初月7ポンド、2ヶ月目以降は月額10.50ポンド、従量課金:0.43ポンド/kWh

出典:Ionity HP

円安が進んでいる現在、0.74ポンド/kWhはおよそ150円/kWh。日本では公共充電の場合、60円/kWhが平均で考えると、イギリスの充電料金はとんでもなく高いと感じた。しかし、冷静に考えてみると、イギリスは電気だけではなく、食事などの日常的な物価も日本の2倍くらいなので・・ちょっと円安の弊害を感じてしまった。

そして、イギリスのガソリン代も調べてみたら、1リットルで1.4ポンドだった。2024年6月時点の為替だと284円/リットル。日本の場合は165円/リットルで考えると、ガソリン代も日本より高いことがわかった。

ここで指摘しなければいけないのは、EVの場合は自宅充電や職場充電が一般的なので、サービスエリアでの急速充電は遠出する時だけということ。自宅で充電ができる場合、ダイナミックプライシングで安い時間帯に充電ができれば、上記の料金よりもはるかに安い価格で充電ができるだろう。また、自宅に太陽光パネルが設置されている場合は0円に近い価格で充電が可能。

最後にご紹介したいのは、石油会社シェルが運営している、元々ガソリンスタンドだったが、急速充電場所に生まれ変わった場所。

ここはロンドン市内のフラムというエリアで、高級住宅街が並ぶ中でひときわ目立っているのが、こちらのシェル・リチャージ・ステーション。急速充電器が10台並んでいて、そのうちの2台が故障中だったが、残りの8台は全て埋まっていた。やはり恐ろしい稼働率だった。

そして、ガソリンスタンドにもあるように、こちらのリチャージステーションにもカフェとコンビニが併設していたので、入ってみた。店内では、車両が充電中の方々がコーヒーを飲みながらおしゃべりしていた。急速充電器の利用は15〜20分が多いので、コーヒーを飲みながら一息つくのにちょうどいいかもしれない。

イギリスの経路充電と目的地充電を回って、最後に車を返却した。

イギリスの新車販売を占めるEV率は18%で、日本の3%よりもはるかに多いため、その関係か、基礎充電はもちろん、経路充電と目的地充電のインフラも整っていた。もちろん、これから更に普及するのを見据えて、充電インフラが更に進化するし、その際にまた新しい課題にぶつかることは予想できる。

日本でも、これから到来するEV時代を見据えて、日本のEV利用者や住宅・駐車場事情に合った充電インフラを構築していかねばならない。イギリスの充電インフラは大変参考になったので、全く同じものを真似する必要はなくても、日本も利用者にとって不便なく使いやすい充電インフラ構築を期待している。

YoutubeでもヨーロッパのEV事情について解説し、実際現地で撮影した動画を上げさせていただいております。よろしければ是非ご覧くださいませ。

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