ヨーロッパのEV事情(1/3)

2024年06月27日

ちょうど2週間前に乱気流に揺られながら、1週間強のヨーロッパ出張に起きた様々な出来事を飛行機内で振り返っていた、ユアスタンドのデニスです。前回執筆させていただいた中国のEV事情が好評だったようで、今回もヨーロッパのEV事情について書かせていただくことにした。

ヨーロッパといえば、中国に続き世界第二の電気自動車(EV)市場。そして、再生可能エネルギーへのシフトに力を入れている地域でもある。そして、日本と同じく自動車産業が盛んで、フォルクスワーゲン、ボルボ、ベンツ、BMWなど自動車メーカー王者が点在している。

もちろん、ヨーロッパの中には多種多様な国々があるため、1つの地域として見られるとしても、ヨーロッパのことを欧州圏内の全ての国に当てはめることはできない。そして、いうまでもなく、地政学的に見ても、資源の観点で見ても、ヨーロッパは日本とは様々な意味では前提となる背景や事情が異なるため、単純に比較することができない。

上記の前提を踏まえても、今回のヨーロッパ出張では多くの刺激を受け、日本でも見習えるような事例をたくさん学ばせていただいた。一方、ヨーロッパで見た課題を日本の技術やノウハウで解決できないかとも考えさせられた。

普段ネットニュースやオンリアン記事でしか日本以外の海外の情報が手に入らないが、実際に現地に行ってみて、現地の方々と話をする重要性を改めて認識した。

さて、今回はロンドン、アムステルダムとバルセロナに行ってきた。書きたい内容が多いので、3本に分けさせていただく。もちろん、出張の内容全てを語ることはできないが、一般的なEV及びEV充電事情、そしてEVとは関係ないが面白いと思ったことを綴らせていただく。

ロンドン市内では、マンションやアパートといった集合住宅と、テラスハウス(境界壁を共有して繋がっている住宅)の2種類の住宅が80%近くを占めている。そして、集合住宅やテラスハウスの多くは、いわゆる契約駐車区画がついていない。イギリスでよく “off-street parking”と呼んでいるのは、一般道路ではない駐車区画(つまり私有地のガレージ、または契約駐車区画)のことを指している。

ご存知の通り、EV充電は自宅または職場で充電されること(基礎充電)が一般的だ。電気自動車は満充電で350〜400キロ程度走れる車種が多いため、自宅や職場で寝ている間や仕事をしている間に充電ができれば、出発時には常に満充電という状態を保つことができる。日常的に350キロ以上走らなければ、基本充電は自宅か職場で足りることになる。そして、遠出するときに経路充電や目的地充電を活用する。

“Off-street parking”がついていない住宅が多いロンドン市内では、EV基礎充電が課題となっている。一方で、Off-street parkingはついていないが、路上駐車することはロンドンでは一般的だ。東京でも一部のエリアでは路駐ができるが、ロンドンでは住宅街に行くと路駐している車がずらりと並んでいる風景は一般的だった。

そして、この路駐の文化を活かして、画期的なEV充電インフラを構築した、ユビトリシティというイギリスのスタートアップがあった。ユビトリシティ社は2021年に石油会社のシェルに買収され、現在はShell Rechargeというブランドでヨーロッパ全域に広がっている。

路駐している際、近くに電柱や街路灯が立っていることが多いが、電柱にはもともと電気が走っているので、電柱と街路灯をEV充電に使えるように改造したのだ。出力は最大5.8kW(230V/25A)というのが一般的。そして、ケーブルは持参する形になる場合が多い。課金は専用アプリ、専用充電カード、またはクレジットカードのタッチ決済。

自宅充電が基本となるEV充電。当然自宅にガレージがあれば充電器の設置は簡単にできるし、集合住宅の場合は当社(ユアスタンド)のようなCPOが入って課金アプリの提供があれば、充電器の導入も可能だが、基礎充電の構築はどの国もその国特有の課題がある。路上駐車が一般的なロンドンやヨーロッパの都市では、電柱や街路灯を活かした基礎充電の構築はまさにイノベーションそのものだ。

日本でも地域によって応用できるかもしれないが、様々な規制が壁となることを予測する。

ちなみに、ロンドンで見かけた電気自動車は多種多様でとても面白かった。

上海ではテスラやBYD、またはニーオ、XPENG、埃安、栄威などといった中国メーカー車ばかり、メルボルンではテスラばかり(一部BYD)、という状況と異なり、ロンドンではアメリカ車、日本車、ヨーロッパ車、中国車、韓国車のEVをバランスよく見ることができた。

テスラはもちろん、そしてヨーロッパ車王者のフォルクスワーゲンやボルボ、ベンツやBMWもたくさん見かけた。それと同じくらい日産リーフと三菱アウトランダーも見かけた。珍しくトヨタのBZ4XやホンダのHonda-eも見かけて興奮してしまった。他には世界で売れているヒョンデと起亜も、そして日本では販売されていないスウエーデンのポールスター、スペインのクープラ、そしてチェコのシュコダのEVも見かけた。

ここまで種類が多くなってくると、自分の好みや家庭事情(子供が多いとか、スライドドアのEVが欲しいとか、SUVタイプがいいとか)にマッチする電気自動車もたくさん選べそう。

日本にもそれくらい多種多様な電気自動車ライナップがあれば、買う人も増えること間違いないだろう。

YoutubeでもヨーロッパのEV事情について解説し、実際現地で撮影した動画を上げさせていただいております。よろしければ是非ご覧くださいませ。

第2部第3部もぜひチェックしてみてください。

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