EV大国の中国に行ってみた。

2023年11月28日

どうも、ユアスタンドのデニスです。この前の連休、上海に行ってきました。7年ぶりの中国、初めての上海だったのですが、EVの普及率が想像以上なだけでなく、色々な面で衝撃的すぎたので、日記形式で書いてみました。個人の感想が多く含まれますが、興味があればぜひお読みください。


この前の連休、上海に行ってきた。7年ぶりの中国、初めての上海だった。

プライベートで行ったのだが、職業病のせいか、中国といえば電気自動車(EV)が最初に頭をよぎるので、今回の旅のサブテーマはEVだった。知らない人のために伝えておくと、世界のEV販売台数の半分以上(58%程度)は中国。そして、新車販売を占めるEVの割合は2020年が5%で、3年後の2023年今現在は30%を超えている。

EVの良し悪しはともかく、また中国という国が全てをトップダウンで決められる政治的な要因もあるが、このスピード感はただただすごい、としか言いようがない。

ネット上の情報や記事、統計上の数字は何回も見ているので、頭の中ではなんとなく理解していたが、現地で物事を観察し、雰囲気を肌で感じ、現地の人と話をしたり話を聞いたりしないと、本当に「理解する」ことはできないだろう。

ここで少し中国の車事情について説明する。

中国ではナンバープレートは主に青と緑に分かれている。電気自動車(BEV/ PHEV)は緑で、ICE(ハイブリッド車含む)は青。ちなみに、今年からPHEVも青になるみたい。

人口の多い上海のような大都会ではナンバープレートを取得するのにお金がかかり、順番待ちになることが多いが、EVにすればお金がかからないし順番待ちもない。また、中国は電気代が安いので、価格面で考えた時、ガソリン車にする理由がほぼない。と思いきや、実は今回中国でPHEVに乗っているが実はEV反対派だった方とも出会ったので後ほど紹介する。

少し脱線するが、電気の話をちょっとする。中国で電気代が安い大きな原因として中国国内では石炭資源が大量にあって火力発電が電源構成の60%を占めているため。電源構成は火力なのでエコではないという批判の声が聞こえてきそうだが、確かにその通り。ただ中国政府は水力と太陽光にものすごく力を入れていて、2030年までにCO2排出量をピークに減少させていき、2060年までにカーボンニュートラルを目指すと発表している。EVをコロナ禍の3年間で10倍まで増やすことに成功した中国政府だから、本当に宣言通りに実現してしまうかもしれない。良くも悪くも中国政府の実行力が恐ろしすぎる。

ちょっと上海の旅の話に戻る。上海国際空港に着陸し、飛行機を降りて、空港を出た時、さてEVを探そうと思って周りに目を配ったら、「探す」必要もなく、目の前に通る車の3台に1台が緑のナンバープレート(EV/ PHEV)だった。

空港を出て、今回泊まる場所(上海郊外にあるマンションというか、中国でいう小区という団地)まで車で向かっている途中、外で通りかかる車のナンバープレートを意識しつつ眺めていた。感覚的には3台が1台がEVだった。

タクシー、バスとバイクはほぼ100%EV。そのおかげで昔記憶に残っていた街歩いていてガソリン臭い、エンジンうるさいというのはなくなっていた。(ただ空気は美味しいとは言えないし、クラクションがうるさいのは相変わらずだった)

タクシーは殆ど上海汽車の栄威(ROEWE)。栄威はPHEVが多いみたいなので、走っている車はBEVなのかPHEVなのか判断がつかないが、とにかく電気自動車オンパレードだった。

団地に着いて駐車場に停まっている車を見てみたら、路上で見てた3台に1台ではなく、7台に1台が緑プレートだった。団地は上海の少し郊外に位置しているせいか、ガソリン車の方が多かった。それでも、テスラ、NIO、BYD、フォルクスワーゲンの電気自動車がずらりと並んでいた。

翌日朝出かけたら、たまたま停まってたテスラの前に若いお母さんのオーナーがいたので話しかけてみた。普段はどこで充電してるの?って聞いたら、アプリ使えばそこらへんにあるよと回答。

そのお母さんは、テスラスーパーチャージャーは高いから使っておらず、基本的にアプリで一番安いところを探すという。

どれくらい安いかって聞いたら、ダイナミックプライシング(時間帯によって料金が変動する)の関係で、高い時は1kWhあたり25円、平均は20円、安い時は10円。日本の公共充電と比べたら2〜6倍安い。安い時間帯を狙って充電するのが普通みたい。

その日は上海の中心部に行っていたが、時間があったので通りかかる車の動画を撮ってみた。上海の中心部だからか、EV率が非常に高かった。

次の日に出かける際、中国ではライドシェアが普通なので、ライドシェアアプリで配車してみた。そしたら案の定、栄威のPHEVが迎えに来た。ドライバーと話したら、意外とEVを進めない派だった。なぜかと聞いたら、市内ならいいんだけど、県を超える移動だと高速道路の急速充電の待ち時間がやばいと。特に連休の時は2時間待ちは普通にあるみたい。それはそうと、中国の面積は広いので、県を跨ると片道数百キロとかは普通にあるみたい(まあ、毎日数百キロ走る人はいないだろうけど)。また、このドライバーはPHEV乗ってるけど、電気切れたら充電はせずにガソリンで走る。電気自動車はあまりお勧めしないという、反対意見も面白かった。

ちなみに、ライドシェアで30分走って400円だった。タクシーをはじめ交通費は安い。上海では食事や交通費は日本と比べて基本的にはるかに安いが、不動産(マンション)は東京よりも高いくらい。現地の人が買えないくらい価格が高騰しているので、一般の人は賃貸で借りているそう。

日本でいうe-Mobility Power(eMP)のような充電ネットワーク事業者は中国にはたくさんある。三大事業者は星星充電、特来電、国家電網(順位不明)。ただ、中国の場合はネットワーク事業者は自社の充電器も作ってることが多い。

星星充電のアプリを開いてみたら、確かにそこら辺に急速充電と普通充電がたくさんある。多いところは70台。少ないところは5台とか。普通充電は基本7kW。急速は50kWと90kWが多いかな。試しに近くのショッピングモールに入ってみたら、40台くらいざらりと並んでて、ガソリン車も停まってるけど、7割稼働中の印象。

充電器はすでにコモディティ化してるので、基本安い。EV自体も、もちろん高い車もあるが、安い国産車もたくさんあるし、種類もめちゃくちゃ多い。写真を見てわかると思うが、中国ではSUVが大人気。

上海で見かけたEVは本当に幅広く、EVの革命児であるテスラは上海にギガファクトリーを持っているので、上海ではテスラがたくさん走っている印象(もしくは単純にテスラの形が独特なのですぐ認識できてしまう)。

それ以外に、最近EVとPHEVの販売台数がテスラを抜いて世界一位になったBYDも多い。ただ、BYDは車種によってロゴが変わったりするのでちゃんと見ないとBYDであることはわからない。

そして、バッテリー交換式を採用したNIO(蔚来汽車)、振興自動車メーカーの理想汽車、XPENG(小鹏汽車)も多かった。そしてヨーロッパの自動車メーカー王者のフォルクスワーゲンも。

残念ながら日本車はあまり見かけなかった。今回はEVにばっかり注目していたので普通に見落としただけかもしれないが。

今回の旅は7年ぶりの中国で、7年前の中国のイメージがかなり変わった。良くも悪くも、日本と比べてあまり清潔ではないところ、町中はカオスなところは相変わらずだが、それ以上に、この数年で色々な意味と形で変化を遂げてきた中国にただただ唖然としている。

EV以外にも、例えばキャッシュレス決済やデリバリーサービスなどの普及が想像以上。お店に入って、現金使えますか?と聞かなきゃいけないレベル(笑)。コーヒーもデリバリーまたは持ち帰り専用店が多く、事前にアプリで予約しお支払いし、お店に入ってQRコードを読み取ってカウンターに置いてある出来たてのコーヒーを取って去っていく。午前中にアプリで買い物したら、早ければ当日の午後に届くこともある。

今回数日間しか泊まれなかったが、色々衝撃を受けた。

自動車を全てEVにしないとダメとか、EVがたった1つの正解だとか、そんなことを言いたいわけではない。

この果敢にチャレンジする精神、スピード感、そしてリスクや変化を恐れないマインドセットと行動力は見習うべきだと思った。日本に長くいると、リスクばかり考えてしまう、変化を拒否する、保守的な頭になりがち。もちろんリスクを考え、保守的であることは悪いことばかりではない。

ただ、技術や産業が日々目まぐるしく変化を遂げている今の時代では、その変化のスピードについていかないと、産業ごとが淘汰されてしまうことを懸念している。

トップコラムEV大国の中国に行ってみた。

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