賃貸物件でEV充電を実現 Wallbox Pulsar Plusの利点生かす

2023年09月26日 マンション・集合住宅

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 ユアスタンドが販売しているEV用充電器「Wallbox Pulsar Plus」のちょっとユニークな導入例を紹介します。なかなか充電器普及の進まない賃貸物件でいち早くEV充電を実現した上に、高出力化傾向の中であえて1.5kW前後という低出力で運用中。いろいろ勉強になりそうです。静岡県を訪ねました。

 「こんにちは」と出迎えてくださったのは友人3人組。活用例もユニークならこのトリオもユニークなので、まずはそのご紹介から。ピンク色の日産サクラのオーナーは会社員の長谷川さんです。自らの愛車はテスラ モデル3。セカンドカーであるサクラを常用しているのは、友人の藤林さん。じつは長谷川さん、タレント活動をしている藤林さんをサポートしていて、「推し活」としてサクラを使ってもらっているそうです。

 去年まで藤林さんが乗っていたのはダイハツ・ソニカでした。長谷川さんが昨年12月にそれをサクラにチェンジしたことで、状況が大きく変わります。長谷川さんの戸建て住宅には、テスラ用のウォールコネクターとは別に充電用200Vコンセントも設置されているので、藤林さん、しばらくは長谷川さん宅や近所のショッピングセンター、日産ディーラーなどで充電していたそうですが、やはり基礎充電があるほうがいい。

 ここで3人目の登場。長谷川さんの友人で、電気工事士の菊池さんです。大家さんへの説明から、充電器の施工、そして運営管理まで、一切合切まかせられるプロが身近にいたからこそ、このプロジェクトがスタートしたのかもしれません。

原状回復できることが大前提

 藤林さんが普段サクラを止めているのは、菊池さんが事務所を構える建物に隣接する駐車場。菊池さんは今年7月、そこにWallbox Pulsar Plusを取り付けました。200Vの電気は、菊池さんの事務所から引いています。

 見た目には斜めに伸びたケーブルがインパクト抜群ですが、じっくり眺めると、工夫を凝らされているのは充電器の取り付け方です。柵自体に取り付けるのではなく、まず支柱に充電器本体を固定しておいてから、そのユニットを結束バンドで柵に固定しています。柵そのものを傷つけないようにという配慮ですね。

「幸い大家さんが理解してくださったのですが、賃貸物件なので原状回復できることが条件。いろいろ考えてこうなりました。この方法は賃貸物件だけでなく、イベント会場など短期間の設営などにも応用できると思います」

 菊池さんはそう話してくれました。2階から駐車場へ引かれた電線も、しっかりPF管で保護されています。シンプルで機能的です。「設置工事は各部屋の配電盤から先なので、そう難しくはありません」と菊池さん。

あえて1.5kWで充電する理由は

 このプロジェクトのもうひとつの特徴が充電出力です。賃貸物件という条件にも起因するのですが、出力をかなり抑え気味。普通充電で一般的なのは、200V・15Aの3kW。でも、ほぼその半分の1.5kWで運用しているというのです。ちょろちょろと電気が流れているのを連想してもらうといいかもしれません。

 EV充電器というと、6kWの倍速だとか、いやいや最大9kWで充電できますよとか、高出力であることをアピールしがち。最近は60kWh以上の大容量バッテリーを載せたEVも増えていますし、一気に充電したいというニーズも増えているでしょう。充電時間も短くて済みます。ただ、基礎充電は、なんでもかんでも高出力がベストというわけではありません。

 契約アンペア数(A)の制約があるからです。各住戸で契約しているアンペア数までしか電気は使えません。IH調理器を使ってる時に電子レンジをつけたらブレーカーが落ちた、みたいな経験はないでしょうか? オール電化の家などは契約アンペア数も高めですが、一般的な住戸では40〜60Aで契約されていると思います。一人暮らしならもう少し低いでしょう。

 例えば6kWのEV用充電器を使うとき、30Aの電気が流れます。電気ストーブとドライヤーとアイロンを同時に使うようなレベル。EVを充電するには、普段の生活に必要な電気にプラスアルファが必要になります。

 ただ、アンペア数を上げればいいってわけでもない。基本料金もアップしてしまうからです。例えば中部電力の場合、基本料金は40Aなら1,188円、60Aなら1,782円です(おとくプラン、2023年9月現在)。使用量に関係なく払う毎月の支出ですから、慎重な検討が必要ですね。

契約アンペア数の壁をクリア

 今回のように賃貸物件の場合は、また別のハードルもあったりします。そもそも契約アンペア数を変えるのに大家さんや管理会社の許可が必要。OKだったとしても、古い物件の場合は建物自体の最大容量が限られていて、ブレーカー交換などの工事が必要になるかもしれません。

 長谷川さんたちが、Wallbox Pulsar Plusを選んだ理由のひとつは、低出力での充電ができることだったそうです。出力が可変になっていて1.2kWから8kWまで調整できます。アンペア数でいうと6Aから40Aですね。6Aというとエアコン並み。

上/菊池さんが見せてくれた出力調整の様子
下/アプリのバージョンによってはダイヤルで出力調整

 ちなみに日産サクラのバッテリー容量は20kWh。菊池さんもいろいろと試してみたそうです。「電欠ギリギリの状態から充電するケースはあまりないですし、一晩あれば1.5kWでも十分だとわかりました。契約アンペア数を上げずに使えるというのは、大きなメリットだと思いますよ」。減り過ぎていたり、早く充電したい時などは、少し電力量を上げることもできます。専用アプリで随時変更できるので、フレキシブルに対応できるそうです。

 藤林さん、充電器が付いてからは、EVライフをノーストレスで楽しめるようになったそうです。「サクラは静かで乗り心地もいいですし、ガソリンスタンドが好きではなかったので、行かなくてすむようになったのはうれしかった。ただ、充電のために時間を取られるのがストレスでした。行動が縛られるのが嫌いなタイプなんです。基礎充電があると安心して使えます。劇的な違いでした。いまはEVってほんとに便利だと実感しています」とのこと。

アプリ活用で広がるコミュニケーション

 長谷川さんは「賃貸物件への設置例はまだ少ないですし、他のEVオーナーさんが大家さんに相談される時などに、私たちの実例をぜひ参考にしてもらいたいですね」と話していました。近くなら菊池さんと一緒にプランニングのご相談にも乗ってくれるそうです。気になる方は、ユアスタンド経由でご連絡してみてください。

 もうひとつ、いいなぁ、と思ったことを書いておきます。藤林さんがやっているのはサクラを止めたら充電コードをつなぐこと。普通ならそれで充電が始まりますが、Wallbox Pulsar Plusは、誰かが勝手に使ったりしないように充電器をロックすることもできます。このブロジェクトでは、菊池さんが充電出力の管理を任されているので、藤林さんは菊池さんに「つなぎましたー」と電話やSNSで連絡するそうです。すると菊池さんが「了解」とアプリを使って適正出力で充電を開始。外出時なども、アプリと連動させたスマートウオッチで簡単に遠隔操作できるそうです。

 このひと手間が、いいコミュニケーションになっています。なんだか家族みたい。長谷川さんは「ほんとうの家族でも、アプリで充電を管理する役割を担当するとかすれば、お父さんの出番が増えるかもしれないですね」と笑っていました。

取材/篠原知存

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