「ザ・ヒルズ秦野レジデンス」でEV体験会開催

2023年12月19日 マンション・集合住宅

  • 分譲
  • 既設
  • 全区画
  • 新規引き込み

 マンション駐車場に充電器を導入した神奈川県秦野市の「ザ・ヒルズ秦野レジデンス」で、管理組合主催の「EV体験会」が開かれました。もっと多くの住民にEVのことを知ってもらおうという企画です。地元の日産ディーラーの協力を得て、アリア、リーフ、サクラをどれでも試乗できるというイベントが実現。電化製品への給電デモンストレーションなども行われました。

 ザ・ヒルズ秦野レジデンスは、小田急小田原線秦野駅から徒歩約10分の住宅街にある地上12階建て164戸のマンションです。訪ねたのは好天に恵まれた12月10日。日中はダウンジャケットを脱ぎたくなる陽気でした。マンションの玄関脇スペースに日産アリアとサクラが置かれていました。立て看板も並べられて、路上に小さなディーラーが出現したような雰囲気。通りかかる人も、なんだろう、という感じでちらちら眺めていきます。

 サクラのそばには普通充電器が用意されて、充電ケーブルの使い方を体験できるようになっています。アリアにはEVから電気を取り出せるニチコン製のV2L機器「パワー・ムーバー」がつながれて、給電が行われていました。

 この2台とは別に、試乗車としてアリア、リーフ、サクラの3台が用意されていて、マンション裏手にある駐車場が試乗のスタート地点になっていました。事前にマンション内でチラシを配って、参加者を募集したそうです。「こんにちは」とやってきた住民の皆さんが、次々に試乗していきました。

 日産の各販売店には「EVスーパーバイザー」や「EVリーダー」などEVに関する知識に長けた専門スタッフがいるそうです。この日の試乗にも同乗してくれて、いろいろな質問に答えてくれました。

 わざわざディーラーに行かなくても、自宅マンションで試乗できるというのはうらやましく感じます。ご近所のよく知っている道なら不安も少ないし、いま乗っている車との比較もしやすいでしょう。短時間の試乗としては理想的に思えます。試乗を終えて、熱心にスタッフに質問を重ねていたご夫婦の姿が印象的でした。

 ザ・ヒルズ秦野レジデンスでは昨年、「充電器を設置してはどうか」という提案を受けて、管理組合理事会の中に専門委員会を設けて設置数や形態について検討したそうです。その結果、将来的な利便性や資産価値の向上を考えて、来客用スペースも含めた駐車場の全区画に200Vコンセントをつけることが議案化され、今年の総会で可決されました。施工と運用はユアスタンドが担当。2024年1月から利用を開始する予定だそうです。

 そんな中で、EV試乗会の開催を企画したのは管理組合理事の太田さん。「いま、マンションでEV・PHEVに乗られているのは2世帯だけ。せっかく充電器がつくことになったので、できれば使ってほしいですし、EVのことをよく知らない人にも、いい機会になるのでは、と考えました」と話してくれました。

 太田さん自身もEVユーザーではなく、次に乗る車として考えているところだそうです。この日はさっそく、奥さんと一緒にアリアとサクラを試乗されていましたが、なかなか好感触だった様子。「アリアが欲しくなりましたけど、わが家の乗り方に合うのはサクラでしょうか。いまのマイカーはリースを利用しているので、リース契約満了のタイミングで考えます」。その頃にはまた、選べるEVが増えているかもしれないですね。

 サクラに試乗していたマンション関係者の源間さんは、パワーに驚いたそうです。「3.2ℓのジープ・チェロキーに乗っているのですが、動力性能は引けを取らない印象です。(エンジンの)回転を上げるようなことをしなくても、トルクでスピードが乗る。驚きましたね。そろそろ最後の車を考える年齢になりましたが、EVにするかもしれません」と話していました。

 試乗会に協力してEVを提供した神奈川日産の黒岩さんからも話を聞きました。「昨年6月に発売されたサクラは、チョイ乗りやお買い物といったニーズにぴったり。おかげさまで人気をいただいていますが、やはり充電器がある戸建て住宅のお客さまがメーンになっています。都心部に近い集合住宅の皆さんにEVの良さを体感してもらえるのは、ほんとうにありがたい機会です」

 ディーラーではいま、短時間の試乗だけでなく、実際にバッテリーの減り具合や充電作業も体験できるように一泊などで貸し出すサービスも人気になっているそうです。「一度乗ってもらって、走りの良さと静粛性を体験してもらえたら、きっと気に入って、マイカー候補に入れてもらえると思っています」。

 集合住宅であることを理由に、EVシフトをためらっている人は、意外に多いのかもしれませんね。ザ・ヒルズ秦野レジデンスのように各自が充電用コンセントを使えるなら、戸建て住宅と同様の利便性が享受できます。ただ、利用台数が増えてくれば、キュービクル(高圧受電設備)なども必要になってくるので、太田さんたちは利用状況に合わせての追加工事も考えているそうです。

 今回、マンションのイベントとして「いいな」と思ったのは、給電のデモンストレーションでした。この日は、快晴のポカポカ陽気だったので、ヒーターはほとんど使われませんでしたが、電気ケトルやパソコンなど試乗会で使われる機器の電源は、マンション共用部のコンセントではなく、持ってきたアリアから給電していました。EVとV2L機器があれば、オフグリッドでAC100Vコンセントが使えますよ、という実演も兼ねていたのです。

 災害などで長時間停電した場合でも、EVの電気を取り出すことで、照明や暖房が使えるようになりますし、情報収集に必須の携帯電話やパソコンも充電できます。一世帯が1日に使う平均電力は約12kWhですから、バッテリー容量が少ないサクラ(20kWh)でも、かなりの頼り甲斐があります。

 マンションの管理組合にとっては、住民の暮らしを守る防災計画の策定も大切な仕事のひとつ。万一の場合にEVは蓄電池としても活用できるというのは、充電器設置の理解を深めるのにも役立ちそうです。

 今回試乗できるのは、住民とマンション関係者に限られていましたが、取材した私もご好意でサクラに乗せていただきました。設定された試乗コースは、回生ブレーキを体感できる下り坂、トルクの太さを感じられる上り坂、加速力を確かめられる幹線道路(国道246号)への合流などが含まれていて、乗る前にチェックポイントとして教えていただきました。サクラはその道をスイスイと走行。静かでトルクフル、走りが軽快で乗って楽しいクルマだと、改めて実感できました。アリアの試乗にも同乗させてもらいました。

 乗っていてもいなくても、EVの特性を知っておくのは悪いことではないですし、マンション内でクルマ好きの隣人と交流するチャンスが増えるのもすばらしいこと。こういうイベントが、あちこちで増えてくるといいですね。

取材/篠原知存

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