充電設備導入に関する合意形成(特別決議と普通決議)

2023年03月26日 マンション・集合住宅

  • 分譲
  • 既設
  • 共用部

 

マンション名:落合ハイム

所在地:東京都新宿区

戸数:200

設置台数:1

本マンションでは202112月の理事会でEV充電設備導入検討開始し、20225月の住民総会で特別決議の議案として挙げられたものの、議決権の4分の3以上の賛成票を得ることができず、取り下げられました。しかし、その後、議案を普通決議に変更し、202210月の臨時総会で可決され、無事導入に至りました。

マンションにおけるEV充電設備の導入に関する合意形成に関しては、住民総会で特別決議または普通決議どちらで付議すべきか、迷われる管理組合が多いかと思います。本記事では、こちらの導入事例を参考に、特別決議と普通決議の違いについて解説させていただきます。

導入のきっかけ

当マンションの住民が電気自動車の購入を検討されていたことがきっかけに、202112月にEV充電器導入の検討開始しました。EV利用者からすると、EVのメリット(車を使わないときに充電できる、外部で充電するより安い等)を享受しデメリット(航続距離が短く、充電時間が長い等)を減らすためには自宅マンション内に充電器が必要と考えました。

20221月、ユアスタンドが当マンションの住民とマンション管理会社向けにオンラインで説明会を実施しました。EV充電設備導入に対して関心のある方々が集まり、弊社による説明後に質疑応答が行われました。

住民向けアンケート

その後、2月に住民向けにアンケートを実施しました。

200戸のうち、96戸から返答があり、結果は以下の通りでした。

その時点でEV/PHVを所有している方は一人もいませんでしたが、車を所有している居住者のうちEV/PHV導入予定がある方が13%充電設備等の条件が整えばEV/PHV購入を検討したい方は48%EV/PHVの購入予定がない方は39でした。

車を所有していない方も含めて全体としてEV充電設備導入について、賛成65%、反対21%どちらでもない7%、わからないと無回答が7%、という結果でした。

車を所有している方に限定すれば、賛成87%、反対10%という結果となり、車を所有している方は、自宅マンションにEV充電設備を導入することに対して賛成の割合が圧倒的に多いことがわかります。

また、賛成の理由として、1位が駐車場の利用率を維持するためにも時代にあった環境に整備2位がマンションの資産価値向上につながる、でした。

東京都は2030年までに新車販売すべてを電動車に切り替える方針を発表しています。駐車場料金は管理組合にとって大きな収入源でもあるので、駐車場契約を維持するためにもEV充電設備が必要だと考えられます。

2回の総会を経て導入

1回目の提案では、平置き駐車場が満杯のため、バイク駐車場の一部整備しなおしてEV充電スペースとして利用するという内容であったため、特別決議の議案として付議されました。特別決議の成立要件、「区分所有者数の4分の3以上」かつ「議決権の4分の3以上」の賛成が必要となります。

一方で、普通決議の成立要件、総会出席者(委任状や議決権行使書も含め)の賛成が過半数以上であれば可決されることになっています。

特別決議と普通決議との大きな違いとして、特別決議の場合は「区分所有者数の4分の3以上」に対して、普通決議は「出席者数の過半数以上」というところです。

本マンションの5月の住民総会では、200の区分所有者のうち、157議決権を行使しましたが、特別決議の成立要件2004分の3に当たる150の賛成が必要なため、ハードルが非常に高くなってしまっていました。

結局、総会出席者(委任状や議決権行使書も含め)のうち92%の賛成票が取れましたが、特別決議の可決で必要な票数には5票足りなかったため、本議案を取り下げることになりました。

そもそも、本マンションでは区分所有者の15%が賃貸に出しているため居住しておらず、区分所有者数の4分の3以上を取ることは大変難しかったと言えます

一方、総会では議決権行使者の92%の賛成票が取れことがわかったので、普通決議の議案にできれば、本議案は成立することを確信することができました。

5月の総会では、バイク駐車場をEV充電場所に変えということが「駐車場の用途変更」に該当し、特別決議になりましたこれを駐車場の用途変更が伴わない議案にし、普通決議にできれば、EV充電器導入はスムーズに決まるため、再度検討を行いました

その結果、本マンションではバイク駐車場とは別スペースにEV充電器を設置する案として再提案しました。これにより「駐車場の用途変更」を伴わない普通決議の議案として202210月の臨時総会に付議することができました。本案件は無事可決され、EV充電器導入が実現しました。

EV充電設備導入は普通決議?特別決議?

特別決議の議案内容は様々ありますが、EV充電設備導入がよく引っかかるのは以下の2つです。

・共用部の著しい変更にあたる

・管理規約(共用部分の範囲)に単独記載するため

しかし、下記通り、EV充電設備の導入に関して、特別決議ではなく、普通決議で採択を行うも可能です。

まず、共用部の著しい変更について。

著しい変更かどうかの判断は管理組合様、管理会社様のご判断ではございますが、一般的にはEV充電工事は特殊な工事や変更がなければ、著しい変更には該当せず普通決議での採択がほとんどです。

参考資料として、補助金の執行機関である一般社団法人次世代自動車振興センター(通称NEV)の特設ページでリンクが貼られているガイドラインを共有致します。

NEV特設ページ

一般社団法人マンション計画修繕施工協会

ガイドライン(該当ページはP17あたり)

そのガイドラインでは普通決議で良いものと解釈されています。またガイドライン内で国交省公表の普通決議で良い工事、特別決議となる工事のケースを見ている限りでも普通決議で問題ない工事と捉えることができます。

多くの場合、EV充電設備設置工事は既存電源を使用し、一般的な電気配線工事(防犯カメラ等と類似)になります。

また駐車場の付帯設備という捉え方をすることも多く、大体の場合は使用細則の制定(普通決議)で対応することが可能と考えられます。

以上の観点から基本的には普通決議で対応されることも多くなっております。

2点目の管理規約(共用部分の範囲)での単独記載について。

共用部分の範囲につきまして、下記のような記載が多いのですが、この中に充電設備を単独で記載するかどうかが1つ議論になります。単独で追記する場合は規約を弄ることになるので特別決議を要します。

ただし、駐車場の付帯設備や電気設備の一部と捉えることも多々ありその場合は規約に記載は不要なので、使用細則の制定で普通決議で問題ありません。実際本マンションでは、駐車場の付帯設備(電気設備)として管理組合として取扱いできることから、EV充電器設置に対する管理規約の変更は不要と判断しました。

1. エントランスホール、廊下、階段、エレベーターホール、エレベーター室、共用トイレ、屋上、屋根、塔屋、ポンプ室、自家用電気室、機械室、受水槽室、高置水槽室、パイプスペース、メーターボックス(給湯器ボイラー等の設備を除く。)、内外壁、界壁、床スラブ、床、天井、柱、基礎部分、バルコニー等専有部分に属さない「建物の部分」

2. エレベーター設備、電気設備、給水設備、排水設備、消防・防災設備、インターネット通信設備、テレビ共同受信設備、オートロック設備、宅配ボックス、避雷設備、集合郵便受箱、各種の配線配管(給水管については、本管から各住戸メーターを含む部分、雑排水管及び汚水管については、配管継手及び立て管)等専有部分に属さない「建物の附属物」

3. 管理事務室、管理用倉庫、清掃員控室、集会室、トランクルーム、倉庫及びそれらの附属物

上記の通り、マンションにEV充電設備を導入する際、住民総会の議案として特別決議、または普通決議にするかによって、導入ハードルが変わります。共用部の著しい変更を伴わず、管理規約に単独記載をしない場合、特別決議ではなく、普通決議で議案として挙げることをお勧めします。

マンションにEV充電設備を導入する際はぜひ一度ユアスタンドにお問い合わせください。

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