横浜市コーディネート支援事業を活用 50年先を見据えて取り組む団地。EV充電器2台導入

2023年04月12日 マンション・集合住宅

  • 分譲
  • 既設
  • 共用部

団地名:杉田大谷団地
所在地:横浜市磯子区
戸数:450戸
駐車場区画:225区画
充電器出力:6kW

背景

磯子区の杉田大谷団地は15棟450戸。1973年3月に竣工して、ちょうど50年が経過しました。日本各地で進む高齢化は、ここでも例外ではありません。そんな中、この団地には2022年末に電気自動車(EV)充電器が2台導入されました。

EVといえば、最先端な技術で革新的、且つ未来的な車両というイメージが強く、(失礼ながら)変化を好まない高齢者世代が多い団地には縁がないようにも思えてしまうのですが、そんな私の固定観念を見事に破ったのが、杉田大谷団地でした。2022年12月、この団地にはEV充電器が2台導入されました。驚くべきことに、出席率82%の2022年の総会で、反対はわずか1票でした。変化を拒むどころか、未来を見据え、この団地のために充電器の導入だけではなく、様々な取り組みに挑戦するために英断を下されたのだと思います。

高齢化が進むこの団地に、なぜEV充電器を導入することになったのか、充電器導入に対してどのように住民の理解を得たのか、謎が深まる中、導入を推し進められた本団地の理事の2名にお話を伺いました。

今回は、48年前に本団地に住み始めた理事長の根本さんと、4年前に引っ越してきてEV充電設備導入に尽力した駐車場担当理事の渡辺さんに伺ったお話に基づいて記事を執筆させていただきました。

団地管理の改善

この団地は1973年に建設されて以来35年間、神奈川県住宅供給公社によって管理されてきましたが、15年前に管理組合が結成されました。それまでは、団地の管理レベルは高いとはいえず、管理組合が誕生した当初、建物の維持管理で大変苦労されたようです。

管理組合が誕生した際、公社の管理費や修繕積立金をそのまま受け継いだのですが、管理不在で修理する必要な箇所が多いということで、団地管理を改善するため、5年間にわたり全区分所有者から毎月1万円ずつ修繕積立金を追加して徴収する決断を下しました。

50年先を見据えた決断と先見の明

その後、横浜市住宅局が主導した「団地再生構想支援事業」が発表され、「100年団地再生構想」として、5年前に申請。市長の承認をいただき、2019年から3年間、コーディネータの支援を受けました。建物の建て替えではなく、100年続く団地を作っていくにはどうすればいいのか、横浜市から派遣された専門家と住民参加の議論を進めました。

本団地はすでに50年が経過しているのですが、次の50年にわたって、どんな設備が必要なのか、居住者はどんなものが必要とするのか、管理組合と専門家が毎月のように集まり、課題を洗い出して議論しました。

このように、杉田大谷団地では目の前の課題や利益だけではなく、50年先の未来を想像し、50年後に必要なものは何なのか?を考え、適した決断を下せるようになったとも言えるでしょう。

やがて電気自動車の時代が到来

2021年、当時駐車場管理担当理事の渡辺さんが理事会で「今後、電気自動車の普及が進むので、EV充電設備を設置してはどうか?」と提案しました。

渡辺さんは元来、車が好き。数年前、ニッサンリーフを2週間試乗する機会がありました。CO2による気候変動にも、関心があり、電気自動車のことを意識するようになりました。今はトヨタのプリウスに乗っていますが、いつかBEVまたはPHEVに乗り換えたいなと考えているそうです。

最近、EVに関連するニュースが多くなり、これからEVの普及が加速度的にすすむと確信していますが、EVの発展には充電インフラが必要不可欠であり、これから日本でEV発展には、マンションや集合住宅におけるEV充電設備の設置が急務ではないかと、渡辺さんは考えました。

杉田大谷団地にEV充電器があれば、居住者のEVの購入へのハードルが、下がるのではないか、ということです。

本団地では現在は、EV利用者は1人もいませんが、充電器が出来れば買い換え時に、EVも検討してもらえる、将来を見据えて1台でも導入してみては?と渡辺さんが提案しました。

当然管理組合理事会でも、『もっと慎重に考えるべきでは?』という戸惑いの声もありましたが、前向きの意見も多くあったとのことです。これは、100年団地再生構想の成果なのでしょうか?「今すぐに必要」ではなく、50年先の未来を想像し、将来の需要を見据えてEV充電設備導入に前向きになったのではないかと思います。

EV充電設備導入に至った3つの理由

そして迎えた2022年の定期総会は、総会出席率82%で、反対はなんとわずか1票で、可決されました。今回無事導入に至った理由は主に3つだと考えられます。
・将来を見据えて行動し、丁寧な管理が行き届く管理組合
・補助金で初期費用軽減
・ユアスタンドシステムで受益者負担の実現、長い目で見れば投資は回収できる

管理組合がどのように将来を見据えて行動し、そして居住者とコミュニケーションを取るかが何よりも大事だと思いました。集合住宅の未来は部外者ではなく、居住者が決めるものです。弊社がどんなにいいものを提供しようとしても、最終的には居住者自身が、自分たちに必要かどうかという判断に尽きます。

杉田大谷団地は、管理が十分でなかった時代も経て、横浜市より派遣された専門家の協力もあり、管理組合が自ら考え、動いてきました。総会で決めたことをどのように実行されてきたのかを、年4回「管理組合通信」を発行紙、きちんと居住者に伝える努力をしています。

また今回のEV充電設備導入について、渡辺さんが『杉田EV通信』を作成し、毎月発行する「理事会だより」に添付して、全3回全戸配布しました。居住者の、EVと充電器に対する疑問に、一つ一つ丁寧に答えていました。

管理組合と居住者とのコミュニケーションによって築かれる信頼関係の基盤は、今回のEV充電設備導入に限らず、マンション・団地の管理を行う上で欠かせないものだと感じました。

管理組合は居住者の未来のためにEV充電設備の導入を判断し、そして疑問に丁寧に答えて納得していただいた上で、今回の案件が無事決議取れたとも言えるでしょう。

2つ目の理由として、国や自治体がEV普及を促進する一環で、手厚い補助金を出しているため、本来なら数百万円かかる設備と工事費の多くは補助金で賄い、管理組合の負担が数十万円で収めることができました。

そして最後の理由として、充電器を運営していく上で、かかる費用や電気代は管理費に上乗せされるのではなく、利用者が利用した分を支払う「受益者負担」の実現が大切です。本団地では車を所有していない居住者も多い中で、自分では使わない充電設備のために管理費を上げられてしまったら、反対する気持ちはわかります。今回はユアスタンドのシステムを導入することで、ランニングコストは利用者負担になるため、使わない人には一切の費用がかからないため、居住者の理解を得られたのでしょう、

2023年度も補助金があります

本記事を読んで、EV充電設備の導入をご検討されている管理組合もいらっしゃると思います。2023年度も集合住宅におけるEV充電インフラのための補助金があり、4月より申請開始しております。弊社は集合住宅にEV充電設備導入・運用に豊富な実績を自負しておりますので、ご検討の際は是非一度お問い合せください

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